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『ドラクエ9』やっとクリア [ドラゴンクエスト]

『ドラクエ9』、やっとクリアした。10日ほどやってた。前回の記事で書いたように、プレイ時間は長いけど、わりとじっくり進めていたので、かかったほうじゃないだろうか。にしても、今回の『9』は……。

いや、『9』の感想は置いといて、まずは『1』から進めている個人的レビューをこなしていこう。今、ここで書くのと、順に進めていって最後に『9』にたどりついてから書くのとではちょっと違うものになっちゃいそうだけど、ここはひとつ、積極的に後者を楽しみにするということで。今回は『3』と『4』を。

3 『ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…』


『1』が、見えない地下深くで進行する地殻変動が地熱の上昇をもたらすかのように、静かに、しかし確実にユーザーの熱狂を膨れ上がらせていったのとは、明らかに違う。その支持を受けて登場した『2』が、期待に違わないどころかいろんな意味で僕たちの予測をはるかに上回る「突き抜けた」作品で、発売後すぐにそのことは広く知られるところとなり、生産が間に合わずオモチャ屋の店頭で切れが続出したのとも、また違う。『3』は、発売前どころか開発中からずっと「お化けソフトの続編」という評判とともにあり、いささか芸のない表現だが、それが「面白い」ものであり、僕たちみんなが喜ぶものであることまでがすでに決められていたような、そんな不思議な状況の中で登場したのだった。冷静に振り返れば、こんなおかしい話はない。著しく公平さを欠いているといわざるをえない。でも、公平であることやフラットな批評的視線を保つことは、必ずしも善とは限らないのだ。とくにエンターテイメントの世界においては。

かくいう僕も、早朝から近所のマルエツのオモチャ売り場が開くのを並んで待ちながら、面白いんだろうなあ、いや、絶対に面白いはずだ、という確信で胸を膨らませていた。予測が外れる気なんてまったくしなかった。でも、さすがにそのときは(それから何年も経つまでは)気づいていなかった。面白いに決まっている。それは間違いない。でも、予想できる面白さなんて、たかがしれているじゃないか。

『3』は、いわゆるゲームとしては恐ろしくよくできている。掛け値なしに、面白い。何年か前にも懐かしくなってリメイク版を再プレイしてみたが、やっぱり面白かった。『ドラクエ』シリーズの中で、万人に自信を持ってオススメしたいソフトを1本挙げるとするなら、僕はこの『3』を選ぶだろう。先に述べたような、大ヒット作の続編というプレッシャーは並大抵のものではなかったはずだが、それに押しつぶされることなく、見事に打ち破って前へ進んだ、力強いワンステップをここには感じとることができる。それは重厚で、とても確かな手ごたえだ。

ところで、たとえば文学の世界には「純文学」と「エンターテイメント」という区分けがあって、その分け方の是非自体が常に論争の種や創作の動機になったりもするわけで、単純な二択として自分の考えを表明することに本来は慎重になるべきなのだが、でもそれはさておき、僕はこの区分け(の有用性)を信じている。だって、『ドラクエ』の『2』と『3』の違いを説明するのに、こんなに簡単な話はないかと思うからだ。

こういうふうに話を展開させていくと、まるで『2』はゲームを超えた名作で『3』はしょせんゲームに過ぎない、という悪口みたいだが、そういう意図はもちろんない。『3』が完成させたゲームシステムはその後のすべての『ドラクエ』の通奏低音として鳴り続け、ときにはそこに何か新しいものを付け足したり変えたりしようとする制作サイドのあがきをあざ笑うかのように、軽はずみな「チェンジ」を拒む強大な壁として僕たちを取り巻いている。生まれた瞬間から明らかな「保守」だった『3』。でも、そんなふうになれたゲームソフトが、はたして何本あるというのだろう?

発売は1988年2月10日。僕は浪人生だった。うろ覚えだが、国立大学を受験するための共通一次試験(現在のセンター試験)が1月の下旬、2つ受けた都内の私立大学が1月末から2月頭。『ドラクエ3』発売はこれが終わってからだったからよかったが、問題はやはり2校受けた国立大学の二次試験だった。どちらも2月下旬で、まさにこの時期は最後の追い込みどころの話ではないはずなのだが、もちろんそんな土壇場のプレッシャーからの逃げ場所として、発売直後の『ドラクエ』ほどうってつけなものはない。クリアまでの数日(4~6日くらいかな?)はまったく勉強になんてならないし、終わってからも、どこか気が抜けたような状態だった。おかげで国立は1校、それも第一志望に落ちちゃったけど(笑)。


4 ドラゴンクエストIV 導かれし者たち


ファミコン最後の作品で、次の『5』からはスーパーファミコンでの発売。そのせいなのかどうか、発売時の騒ぎが社会現象にまでなったのはこのときがピークだった。かくいう僕も、発売日に鼻息荒く購入したのはこれが最後だ。というか、このときまでは最初の入荷を逃すと次までに冗談じゃなく10日とか待たなくてはならなかったりして、その10日後ですら自分まで回ってくるかどうか100%定かではなかったりしたものだが、スーパーファミコンの頃からはどんな人気ソフトでもわりといつでも手に入るようになったからという、それだけの理由だったのかもしれない。

最初に宣言してしまうと、僕はこの『4』がかなり好きだ。でもそれは「評価している」とか、いちばんの名作だとかいった意味とはちょっと違う。さりとて、ごくプライヴェートな思い出のようなものと結びついた私的な評価ということでもなく、あくまでもゲームとして、他のゲームと比較して好みだということだ。

最初にプレイしたときからずっと感じているのは、この作品には、何か新しいものにチャレンジしようという意気込みが隅々まで溢れているという感覚だ。それも、たんなるシステムがどうとかグラフィックがどうとかいう新しさではなく、もっと根本的な、うまくいえないけどまったく新しい遊びを考えるときのようなクリエイテヴィティの使われかたが、ここにはあるような気がしてならない。それはたぶん、『3』で予測できる限界の高みにまで達した『ドラクエ』を、次はどうしたらいいのかという問題から逃げなかったことの証なのだと思う。極端なことをいえば、こういう『4』を作るか、でなければシリーズを『3』で終わりにするか、そういう選択だったんじゃないか。そんなふうにすら思うのだ。

ただし、その試みが成功したかどうかはまた別問題だ。ストーリー的にもゲームそのものとしてもかなりテイストの違う5つのパートから成るオムニバス形式といい、パーティーの仲間にコマンドが出せないAI戦闘といい、どちらもアクの強いもので、そして結局のところ、その後のコンピューター・ゲームの本流とはならなかった。批判も多い。ストーリーの押し付け。1~4章の主人公たちが勇者のもとに集結してパーティーを組んで巨大な敵に立ち向かう「本編」ともいうべき第5章が、おそらくは容量の関係もあったのだろうが、食い足りない印象で終わってしまう。AIのダメさにイラついた記憶しか残らない。etc……。

でも。と僕は思う。ここには、「次はいったいどうなるのだろう?」という、エンターテイメント作品に最も大切なものがあるんじゃないだろうか。ここでは、『ドラクエ』の『1』~『3』をはじめ、たくさんのゲームをプレイしてきた過去の経験知からの予測を、簡単には立てさせてくれない。誰よりも、作り手側が、そのような古く、だからこそ確実な遺産を封印し、なかったものとして次の一歩を踏み出そうという気概に溢れている。それは、最終的に生じたさまざまな瑕疵を認めたうえで、それでもやはり、他の何よりも重要なことだと思う。

夢中でストーリーを進めているうち、あちこちのキャラクターに乗り移っていた自分の視点が、いつのまにか主人公を中心とした複数を統合したもの(それは、他に表現できる言葉のない、独特なものだ)へと変わっているという体験を、他のどんなジャンルのエンターテイメント作品で得ることができるだろうか? 仲間の行動をAIに任せるしかない戦闘が、いかに思い通りにならない僕たちのリアルと似ていることか。そこには、ゲームとしてのデキとはまた別次元の、プレイする楽しさが存在する。

この作品は、PSとDSで、それぞれリメイク版が発売されている。僕はそのどちらもプレイしていないが、最初に出たPS版では、戦闘はAIの他に命令することもできるようになっているとのことだ。たぶんDS版も同じだろう。ユーザーの選択肢を増やし、自由度を高めることは、現在のところゲーム作りの本筋ともいえる流れとなっている。それはいい。だが、かつてなかったものに、安易に後からそれを加えるのは、少なくとも商品作りではあっても、作品作りではない。古典小説を、主人公が暗いという評判があるから少し明るい性格に書き直して発表するようなもので、いや、それがいけないと言っているわけじゃなく、先行する作品に対峙するそれなりの覚悟とともにあればいいのだが、まるでどんな切れ味のいいナイフよりも10徳ナイフの方が喜ばれるに決まっているとでもいうような安直な盲信が、我慢ならないのだ。制約の多かった、不自由な昔をよしとするある種の懐古趣味で言っているわけでは、断じてない。そういうことじゃない。そういうことじゃないんだ。

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ふにゃちゅう

ドラクエを制する者が受験を制するわけですね♪
by ふにゃちゅう (2009-07-22 01:58) 

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